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基礎知識

「社会生活」能力について

投稿日:2017年3月30日 更新日:

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前回記事でこれからの精神科看護に求められる事のなかに「落ちた生活能力」「忘れてしまった社会生活」といった点がありました。
これから変わるであろう精神科看護

今回はこの生活能力についてを紹介したいと思います。

そもそも生活とは?

生活」には生きながらえる。生きていく為の活動とそのままの意味ですが

 

人間の「生活」には単に衣食住だけではなく

 

資本主義の社会で生きていく

 

事も含まれます。

 

これは収入を得て生計をたてる事や様々な人間関係を維持していく事やその社会の中で「その人らしく生きていく事が含まれます。

 

その人らしく生きる事とは?

その人がその人らしく生きているかどうかを指す言葉としてQOL(quality of life)という概念があります。

これは人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指します。

 

どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送れるかどうかは

「心身の健康」

「良好な人間関係」

「仕事の充実感」

「快適な住環境」

「十分な教育」

「余暇活動の充実」

など色んな側面が複合して決まります。

生活を評価するスケール

この生活能力を評価するスケールとしてADL(activities of daily living)という言葉があります。

これは日常生活動作と言い、「食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴」など生活を営む上で不可欠な基本的行動動作の事を指します。

 

またこのADLでは捉えきれない上位の生活能力評価として手段的日常生活動作(IADL)というものも存在し

 

「電話の使い方、買い物、家事、移動、外出、服薬の管理、金銭の管理」など主に家事が出来るかどうかといった指標があります。

 

私自身も実際の病院の仕事で患者を観る際、この評価を使っています。

 

ですがこれだけでは「生活」を評価するには不十分です。

生活を構成する色々なADL

生活をする上で色々な能力が必要となり、この指標としてADLがあると言いました。

ここでICF(International Classification of Functioning Disability and Health)という国際生活機能分類 といった指針があります。

 

これは人が生きていくための機能全体を「生活機能」としてとらえる。

その「生活機能」は、

国際生活機能分類での生活機能
・体の働きや精神の働きである「心身機能
・ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動
・家庭や社会生活で役割を果たすことである「参加

の3つの要素から構成される。とあります。

 

良く「ADL」と「IADL」は医療の現場で耳にしますが、この二つは上で言う「心身機能」の一部と「活動」であり、参加」に対する認識が薄い現状があります。

 

これは一般的な考えとしては何かしらのけがや病気があったら、「健康になりたい」「仕事や家庭がある」などの自分で問題意識をして行動するからです。

 

ですが、この問題意識にも病気の影響が出る精神科疾患はどうでしょうか?

 

社会的ADLを観るために

まず社会生活を営む上で、適切に判断する能力を社会的判断能力といいます。

これは自分の行為の結果を適切に判断し責任を持つ能力ともいえます。

 

 

上記でもあるようにこれは社会生活の中で生きている人はごく自然に行っている「常識的な事」です。

これをもう少し分解してみたいと思います。

 

 

まずは「社会的認知」という概念があります。

社会的認知
人が社会からの情報を認知する過程を言う。
社会的認知はスキーマに基づいている。

スキーマとは過去の経験や外界についての構造化された知識である。
※スキーマ:枠組み的知識、ある範囲内の構成要素の変化に対応しうる柔軟な知識

これは

「他者の意図や性質を理解する人間としての能力を含む対人関係の基礎となる精神活動ないし自分と同種の生物への対応を支える過程」

と言われてます。

 

この他者の部分を対人だけでなく社会全体に置き換えると「対人関係の基礎」の部分が法律や良心と言い換えてもいいと思います。

 

俗っぽく言ってしまえば、これが出来ている人は

 

空気が読めて、気を使える人

 

です。

 

そしてこれを評価する上でFIM(Functional Independence Measure)といった生活評価スケールがあります。

 

これは機能的自立度評価表といい、様々にあるADL評価法の中でも、最も信頼性と妥当性があると言われていて特にリハビリの分野などで幅広く活用されています。

 

具体的には、食事や移動などの“運動項目”13項目と“認知項目”5項目から構成され1点から7点の点数で採点をします。

この認知項目の中でも社会的認知という項目があり、一緒にコミュニケーション能力についても書かれてあります。

機能的自立度評価表の一部
・コミュニケーション
理解:聴覚または視覚によるコミュニケーションの理解
表出:言語的または非言語的表現
・社会的認知
社会的交流:他患者、スタッフなどとの交流、社会的状況への順応
問題解決:日常生活上での問題解決、適切な判断能力
記憶:日常生活に必要な情報の記憶

 

これら上記で紹介してきた事をまとめると

・人間が社会と中で上手く生きていく為には

その社会のルールやマナーを理解した上で行動する。

 

・社会生活は様々な人間との関わりで構築されている為、これらをきちんと認識している。

そして自分の意見を伝えられ相手の話を聞ける。

 

といった様です。

 

以前書いた常識とは社会の中で許される「幅」にも言い換えられる事と思います。
精神の解剖生理は「知情意」から

 

これがきちんと出来る為には、今まで成長発達の過程が概ね正常であり、こころの状態が健康的でないといけません。

 

これを観察評価援助する為には様々な経験や知識が求められるだけなく、これを伝えるコミュニケーション能力も求められる為、日々悪戦苦闘しています。
(;´Д`)

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